2022/08/08

MMCから見る3DモデルとVR

まず初めに、「MMCとは何なの?」という方の為にMMCのことを詳しく書かれた記事があるので是非そちらを一読して頂きたいです。

「VR空間において欠かせないものは何?」という問いかけをされた時、真っ先に想像するモノは各々で様々あると思います。
筆者が思い浮かべるのはアバターや3DモデルといったVR空間を存在させるために必要不可欠な存在が真っ先に出て、その3Dの物体たちが一番いきいきとする場所の一つがVR空間だと日々感じています。

2018年3月にVR空間と出会い、その時に「3Dモデルが作れればこの空間のすべてが表現できるんじゃないか」と感じたソレは今も私をモデリングに駆り立ててくる原動力として脈々としています。

・・・では筆者は一体だれなのか?

名前はJphonix(ジェーフォニクス)というややこしい名前です。
仮想重工というショップ名でメカアバターや小物などを主に製作しています。

MMCを語る上で、筆者はMMCでどんな成績を残しているの?

MMC World部門 佳作入選
MMC21 World Misc部門 1位4
MMC22 World Misc部門 1位
Avatar部門 1位

過去3回ほど開催されたコンペは全て出場し、チームの3Dモデリング担当として全力で挑んできました。

MMCが開催されるNeosVRが他のVRプラットフォームのもつ機能と大きく異る部分の一つに、VR空間上のその場で3Dモデルを読み込めるという機能があります。
NeosVRを未体験の方は一体どういうこと?と思うかもしれませんが、VR空間で特に設定など必要なくそのままNeosの画面にFBXファイルをドラッグアンドドロップするだけで3Dモデルをインポートできてしまうのです。

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”インポート時の写真”

これはVR空間を構築する上で、PC画面上で設定した時のスケール感やVR内との視野角の違いなどで起こる見え方の違いに苦しむことがなくストレスフリーにワールド製作ができる素晴らしい機能で、他のVRプラットフォームでは聞いたことがないNeosVR独自の機能です。

MMCではこの機能を最大限に活用しながら、ワールドを構築していきました。
一体どういうワークフローで活用したのか少しだけ説明していきます。

1.まずワールドのコンセプトと目指すべき完成への方向性を固めます。

この工程を怠ると、余計なタスクが増えたりチーム内での作業が決まらないなどデメリットが多くなり苦労します。
メンバーそれぞれが完成形をイメージできるよう、参考画像やラフスケッチなどをチーム内でしっかり共有することが大切だと感じました。

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”コンセプトをイラストで共有”

2.ワールドの広さやスケールを決める。

モックアップ(プロトタイプ)の3Dモデルを用意して実際にNeosを使ってVR空間へ持ち込みを行い、VRの現場でワールドの広さや重要な建造物などの位置を確認したりスカイボックスなどレンダー順に影響が無いかなどのチェックを緻密に行いました。
この工程では実際に大まかな形状を作ったモデルを用いて、ワールド全体の距離などをしっかりと決めました。
ジオメトロポリスでは描画範囲外スレスレまでワールドの広さを使いたかったので、何度もモデルを修正しながら調整し直径およそ3km高さ2.5kmで描画に問題がないと分かりその枠組で作り上げました。

3-1.モデルの作り込み

実際にモデルの大きさが決まれば、その枠内で存分にチームや自分の世界観をモデルで表現する段階へと入ります。
では実際のところ、どれくらい作り込む必要があるかという話になってきます。
リアルスケールで直径3kmほどの面積がある巨大建造物ともなると全体を作り込んでしまってはMMCの製作期間である一ヶ月では到底間に合いません。

では、どうしたのか・・・

まずワールドの経路を洗い出すかもしくは固めて、そのエリアから見える範囲を調整することで余計な部分をできる限り省略することです。

ジオメトロポリスではスポーン地点から最後の展望エリアまでほぼ一本道となっていて、その道中で見える景色というのは絞り込まれています。

そのユーザーから見える景色の部分に力を入れて製作し、テクスチャや配置するオブジェクトなどの情報量をコントロールすることで景色の移り変わりなどの変化や見え方を様々な形でワールドに散りばめました。

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”試作段階でのエレベーターからの景色”

3-2.軽量化や製作シーンにおける時短テク

先述したように見える景色の絞り込みを行ったとはいえ、ワールド全体の広さを活かすためにはそれなりの量のオブジェクトや建造物などのアセットたちが必要となってきます。
そこで、まず時短術として用いたのがBlenderの新機能として実装されていたジオメトリーノードを使ったアドオンで、建物をプロシージャルに生成した点です。
ユーザーの立ち位置から見えるビル群などの建物群はかなりの距離があり、それほど精細にディティールが必要とされていないのでキューブを基本形として壁や屋上に様々な形のオブジェクトを散りばめて配置することで不規則性をつくり、大量でありながらも軽量で密度ある空間を演出することが出来たと思っています。
さらに、ビル群は全体で1オブジェクトに纏まっているため、VR内でのアセット呼び出しなどによる描画負荷も最低限にした点も大きく軽量化へ貢献していると思っています。
さらにテクスチャもUV側でアトラス化してできるだけ使用するマテリアル数も抑えました。
これはアセットの呼び出し回数を抑えロードを少なくし、多くの場面でテクスチャの使いまわしを行っているのでとても負荷が少なく済むのでしっかりとアトラス化を施してあります。
UV展開やアトラス化もアドオンを用いることで効率的で緻密に調整ができる点も体力的にかなり楽が出来たと思いました。

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”実は真上から見ると建物群はNeosのロゴマークに・・・”

4.ワールド内のギミックを組む上での注意点

ジオメトロポリスではドアやエレベーターやゴンドラなど様々なギミックを道中に散りばめたのですが、ギミックを組み込む前提の3Dモデルで最も気をつけなければいけないのは原点位置です。
回転や移動をする動きがあるオブジェクトでは、しっかりと決められた位置に原点がないと単純な座標入力や回転入力では動かせない場合があるからです。
複雑な計算や手順を踏まずに簡単にギミックが組めるのに越したことはありません。
これはチームメンバーへの負担軽減にも繋がる大切なことです。

5.終盤にかけて

ワールドの骨組みが出来上がればあとは細かな装飾などに注力できるようになるわけですが、そこまでたどり着くのに体力を如何に温存しながら1ヶ月作り続けられるかというのが私のMMCにおける課題であったと思います。

終盤にもなるとワールドを装飾するオブジェクトを作りVR内に持ち込んで実際に配置して、おかしければBlenderで修正を行い、VRに持ち込むという行為をひたすら繰り返すのですがやはりモデリングソフト上とVR内では思っていた見え方と少し違ったりで試行錯誤が多いので簡単にインポートして確認できるNeosは素晴らしい機能を備えているなと日々感じています。
これが私が3DモデルとVR空間の強いシナジーを感じる場面です。

他のVRプラットフォームでも3Dオブジェクトが簡単にインポート出来るようになればさらにモデルの需要が加速し、様々な用途で使われると思うのでもっと楽しいVRライフが待っているはずですから、VRの発展を心から願うばかりです。